FIFAワールドカップ本大会が開催されるブラジルへの道は、欧州からのあらゆる出場国にとってかなりの長旅となる。しかし、時差ぼけと気候の変化への対応ということで言えば、最もつらい目に遭うのはファビオ・カペッロ監督率いるロシアだろう。
UEFA加盟のワールドカップ出場国で唯一、代表メンバー全員が国内リーグでプレーするロシアは8日、モスクワからの14時間のフライトを経てブラジルに降り立った。しかも今後、チームを待ち受けているのはブラジル国内の長距離移動だ。ロシアはグループHの3試合で、クイアバ(韓国戦、6月18日)、リオデジャネイロ(ベルギー戦、6月22日)、クリチバ(アルジェリア戦、6月26日)の3都市を回る。さらにベスト16に進出すると、ポルトアレグレかサルバドールのいずれかに赴くことになる。
これは容易な課題ではない。日本と韓国で開催された2002年のFIFAワールドカップでロシア代表のチームドクターを務めたユーリ・バシリコフ氏はUEFA.comの取材に応じ、こう語った。「長距離移動に関しては、新たな科学的事実が明らかになっている。北からまっすぐ南に移動する場合、たとえば(ロシアから)マダガスカルに向かうのであれば、話は簡単だ。人間の身体は変化に適応する必要もない。しかし、東や西方向への移動を伴い、なおかつ4時間以上を飛行機内で過ごす場合、身体は新しい環境に適応しにくくなる」
ロシアはすでにベースキャンプを置くイトゥでの練習を開始しているが、カペッロ監督は今のところ、選手たちに厳しいメニューを課していない。この点について、バシリコフ氏は指揮官の判断を歓迎している。「長いフライトの直後に、選手は厳しいトレーニングを行うべきではない。回復までには時間が必要だ。しかも、東から西方向へ移動した場合は、特に睡眠を取りにくくなる」
しかし、地元ロシアのメディアではデング熱を心配する報道も出ている。デング熱は人間を始め、蚊やサル、キツネザル、リス、コウモリなどの動物を媒介に伝染するウイルス性の疾患だが、ロシアのベースキャンプから50キロ圏内で症例が報告されているという。しかし現時点では、カペッロ監督は頭を悩ませてはいないようだ。「この問題については全容を把握している」と、イタリア人指揮官は語った。「チームを守るためにあらゆる手段を講じているよ」
この「あらゆる手段」には、当然ながら栄養管理も含まれる。ブラジルでロシア代表のシェフを務めるニーノ・グラツィアーノ氏は、今後数週間に選手たちが口にするものについて、その概要をすべて決めているという。「脂肪分の多い食べ物には“ノー”と言うつもりだ」と、シチリア島出身のシェフは断言する。「パスタに鶏肉、魚、米に野菜を添えたものは食べていい。あとはもちろん肉類だね。ブラジルにはおいしい肉が手に入る。また、選手には果物をたくさん提供するつもりだ。チームのムードや成績は、食べるものの質によって大きく変わってくるからね」
バシリコフ氏は、今回と同様、2002年大会でも食事は大問題だったと証言する。「こうした大会の間は、豪華な食事はあまり良くない。選手の身体には非常に大きな負荷がかかっているからだ」と、同氏は振り返る。「ただし、選手それぞれの要望を考慮しなければならない。2002年当時、私はキャビアを持ち込んでパンにつけていたよ。それは一部の選手に喜んでもらいたいとの気持ちからだった。決して自分が食べたかったわけではなかったね」
ブラジルでもこうした高級食材を口にする機会はめったになさそうだが、バシリコフ氏が指摘するように、チームは遊びに行っているわけではない。「選手は多少、苦しい思いをする必要がある」と、同氏は結論づけた。「母国に帰れば、思う存分休めるのだからね」
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